やっぱり知りたい!鶴見俊輔 -生活記録編- in京都

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やっぱり知りたい!鶴見俊輔 -生活記録編-

2018/7/13(金) 19:00~2018/7/15(日) 20:00

イベント受付開始時間 2018/7/13(金) 18:30~

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やっぱり知りたい!鶴見俊輔 -生活記録編-

鶴見俊輔は、1922年に生まれ、2015年に亡くなった思想家です。この講座では、彼の思想と実践をとりあげますが、年長のファンこそ多いけれども、若い世代にはあまり知られていないでしょうか。
彼よりも若い世代の研究者に、彼は大きな影響を与えています。一例を挙げると、見田宗介、上野千鶴子、小熊英二、吉見俊哉、加藤典洋、鷲田清一、宮台真司などがいます。また、梅棹忠夫、小松左京、芦津珍彦、岡本太郎、作田啓一、永井道雄、藤田省三、吉本隆明、小田実、橋川文三、丸山眞男など、同時代を生き、交流し協働した作家や知識人も枚挙にいとまがありません。それに、京都大学・同志社大学などでの勤務経験があるのに加え、長らく岩倉に住んでいたので、この土地に縁がある人でもあります。

彼の親類は、「錚々たる」という言葉にふさわしいものです。姉の和子は、内発的発展論(近代化論)、移民研究、生活記録運動、水俣研究、エコロジー思想などで知られる社会学者です(ちなみに、皇后は彼女の「ファン」)。いとこの良行は、『バナナと日本人』『ナマコの眼』で知られる高名な人類学者・アジア学者で、アジア太平洋資料センターの設立メンバーとなっただけでなく、戦後早くから先駆的な写真論を展開していました(秋篠宮文仁は彼から教えを受けた)。父の祐輔は、新渡戸稲造の愛弟子であり、先進的な外交手腕があった政治家・政治評論家だっただけでなく、生前は『母』などのベストセラーで知られていました。そして、祖父は、あの後藤新平です。

では、鶴見俊輔、その人はどうでしょうか。恐らく、控えめに見ても、彼らに劣るところはありません。ごく一部を列挙します。
・アメリカに発するプラグマティズムをいち早く紹介した(とりわけ、戦後の早い段階で、自伝的な情報を含む形で、パースをまとまった仕方で紹介した点が特筆に値する)。
・武田清子・武谷三男・鶴見和子・丸山眞男らと雑誌『思想の科学』を立ち上げた。
・マルクス主義全盛の時代に、コミュニケーション研究やマスメディア研究を推進し、先鞭をつけた。
・全三巻ながら、十数万部規模で売れた共同研究『転向』を行なった(吉本隆明の転向論は、この知的遺産の上に築かれた)。
・「十五年戦争」という、今日では当たり前に用いられる言葉・発想を提出した。
・大衆映画・大衆小説・マンガなど、ポピュラーカルチャーの研究を行い、低俗視されていた大衆文化を研究の俎上に乗せた。
・「声なき声の会」や「ベトナムに平和を!市民連合」(ベ平連)など、中央集権的でない仕方で、社会運動を展開し、現代の市民運動のベースを作った。
……というように、鶴見の足跡は、いたるところに見ることができます。

 この講座では、鶴見俊輔の思想の一端を紹介します。ただし、ご覧の通り彼の思想は多岐にわたるので、全体を満遍なく解説することはできません。ここでは、鶴見自身が、ある文章の中で「個人」「社会」「運動」と議論を三つの層に分けていることに注目し、「個人」のレイヤーに話題を限定することにします。
 しかし、なぜ鶴見俊輔を今読むのでしょうか。2015年に亡くなった思想家としてなんとなく目につくといった理由(だけ)ではありません。恐らく、彼の思想を貫くプロジェクトの一つは、「健全な反知性主義を作る」ということであり、トランプ現象やブレグジットをきっかけに話題となったポピュリズムを考える際に、日本の巨大な思想家の反知性主義――ポピュリズムを支える平等主義的な視点――を踏まえておくことは、現代の動向を見る上でも参考になることでしょう。
また、今回の講座を貫くテーマを設定することにします。それは、「自分の経験を言語化すること」です。というのも、自分の過去や、自身の感情、世間の正解からすると正しくない行動など、個人の繊細なことがらを、「書く」「言う」「言語化する」という視点から、鶴見は様々な論考を書いているからです。
「自分の経験を書く」というテーマについて様々な場所で話したところ、「日記、実習記録、創作日誌、フィールドノートなどにも通じる視点ではないか」という指摘を複数もらいました。これらの話題に関心のある人にも、役立つ内容を提示したいと思っています。
 
 

第一回 なぜ「実感」が大切なのか――鶴見俊輔は失敗する

心理学者の河合隼雄は、文学研究者の桑原武夫との会話で、鶴見が話題に上ったときのことを書いています。河合が書き留めたのは、「世の秀才は、自分に不利なことは上手に隠すけれども、鶴見は、自分に不利なことを平気でしゃべる」という評価でした。
実のところ、この評価は、鶴見が生涯批判し続けた「一番病」の発想を下敷きにしたものです。そして、この発想は、教育論、日本社会論、知識人論など、鶴見の様々な議論のベースになっています。ここでは、河合の書き留めた会話が「自分」を軸にしていることに注目しましょう。それは、鶴見の議論の核心を捉えているだけでなく、本講座のテーマ――「自己の経験を言語化すること」――に通じるものでもあります。
第一回では、鶴見俊輔の「一番病」の発想を踏まえ、それに対する批判として鶴見が評価した「生活綴方(運動)」を見ていきます。その際、彼の議論の要点・変化をおさえるだけでなく、その理論的限界を確認することになるでしょう。
キーワード:一番病、作文(生活綴方)、実感、「日本の思想」(丸山眞男)
 
 

第二回 なぜ人は自分を偽るのか――鶴見俊輔は想像する

鶴見に見出され、『思想の科学』でデビューした映画評論家の佐藤忠男は、教育評論家として作文教育(生活綴方)についていくつかの文章を書いています(ちなみに、佐藤は日本映画大学の学長で、同学は芥川賞作家の阿部和重を輩出しています)。佐藤の文章論は、第一回で見たような「行き詰まり」とは無縁の道具立てを用いて構成されていました。従って、鶴見が見落とした生活綴方の可能性を捉えることができました。
第二回では、正岡子規らの写生文や自然主義など、日本文学の伝統をさかのぼり、独自の道具立てで展開された佐藤の文章論を解説するとともに、佐藤の方向を共有するように、後年の鶴見が卓抜な政治論「方法としてのアナキズム」で提示した自己記録の可能性を見ていきます。
キーワード:ナルシシズム、想像力、ソロー(『ウォールデン』)、無駄なもの
 
 

第三回 期待と回想はどう違うのか――鶴見俊輔は思い出す

 鶴見俊輔には、『文章心得帖』という本があります。この本は、美文調で書くこと、すらすらと書くこと、うまい表現をたくさん覚えることを提案するものではありません。むしろこわばるような表現、率直で平凡なので必ずしも美しいとはいえない表現を好んでとりあげてすらいます。具体的な文章を検討しながら、「自己」が軸に据えられるかどうかに鶴見は注意しています。
また、同時期に発表された戦後から戦前を振り返るような文章に注目しましょう。そこでは、和辻哲郎の自己記録と、『戦艦大和ノ最期』で知られる吉田満の自己記録が比較されます。これが興味深いのは、「自己の経験を書く」という視点から、和辻が激しく批判されるのに対して、吉田がほとんど手放しに激賞されることです。「私たちの世代が持ちうる最良の人」と語るほど、鶴見は吉田満に高い評価を与えているのです。これらの評価を分けるのは何なのでしょうか。
第三回では、これまで講座で見てきた内容を、『文章心得帖』の語彙で捉え直した上で、二つの自己記録をめぐる鶴見の評価を手がかりに、「自分の経験を書くこと」をめぐって鶴見が提案した基準を明らかにします。
キーワード:原体験、戦前/戦後、期待と回想

 
 

ナビゲーター: 谷川 嘉浩(たにがわ よしひろ)

京都大学人間・環境学研究科博士後期課程
日本学術振興会特別研究員(DC2)
専門は英米哲学。NHKニッポンのジレンマ(Eテレ)に出演。今年は、メディア・スタディーズに関する書籍(ボーカロイド論)と、哲学入門(宗教哲学)が出版予定(いずれも分担執筆)。「新京都学派の言葉と教育」研究会を共同で主宰。
研究実績
 
 

読書案内:

入門:宮台真司「鶴見俊輔と、「サブカルチャー神話解体」」みなさんの常識は、世界の非常識vol.22
鶴見俊輔が亡くなったとき、宮台は出演したラジオで、鶴見の仕事を「社会心理学」という観点から紹介し、それを受け継いだ人として、佐藤忠男や見田宗介らの仕事を挙げていました。この記事では、そうした視点に加え、「優等生」という病、つまり、「一番病」についても解説されています。鶴見の雰囲気を知るのにぴったりでしょう。見田宗介の鶴見追悼インタビュー「ラディカルであるということは素朴であるということだ」(『すばる』2015年10月号)を併せて読むとなおよし。

中級:鶴見俊輔『文章心得帖』(ちくま学芸文庫)
講義を基にした鶴見の文章論です。単に読み物として面白く読むこともできますが、せっかく鶴見の思想を知ろうとするのであれば、この本の「紋切り型」というキーワードに注目してください。この言葉は、「優等生」や「一番病」と重ねて読むことができます。他の誰かがもっとうまく書くかもしれないけれど、それでも、他でもない自分が書くんだという微妙な葛藤に焦点のある珍しい文章読本です。普段から日記をつけている人、自分の経験を書き残す必要がある人だけでなく、SNSなどで自分の経験をしばしば語る人は、身につまされる内容だと思います。文庫解説は加藤典洋。

上級:鶴見俊輔「方法としてのアナキズム」(黒川創編『身ぶりとしての抵抗 鶴見俊輔コレクション2』河出文庫所収)
鶴見俊輔が残した膨大な文章の中で、最も重要だと私が考えるのはこれです。少し前に出た、森元斎『アナキズム入門』(ちくま新書)では、この文章のアナキズムの規定が「わかりやすい」「すごくわかりやすい」(原文ママ)と称賛されていました。「アナキズムは、権力による強制なしに人間がたがいに助けあって生きてゆくことを理想とする思想」というのが、鶴見の定義です。こうした素朴な感覚から始めながら、それが決して、現実にはならないことに冷静な目を向けるというのが、この文章のポイントです。こうした議論と「自己の経験を書くこと」がどう結びつくのか――それは、ご自身で確かめてみてください。文庫解説は川上弘美。

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2018/7/2(月) 03:00~

2018/7/15(日) 17:00

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チケット情報

このチケットは主催者が発行・販売します

第一回 なぜ「実感」が大切なのか(7/13)

[販売期間] 7/2(月) 03:00~7/13(金) 17:00

1,200円

第三回 期待と回想はどう違うのか(7/15)

[販売期間] 7/2(月) 03:00~7/15(日) 17:00

1,200円

第二回 なぜ人は自分を偽るのか(7/14)

[販売期間] 7/2(月) 03:00~7/14(土) 17:00

1,200円

3日間通しチケット

[販売期間] 7/2(月) 03:00~7/13(金) 17:00

3,000円

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