「民族・帝国・アゼルバイジャン」―「当たり前」を疑う歴史学 vol.1― in京都
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「民族・帝国・アゼルバイジャン」―「当たり前」を疑う歴史学 vol.1―
遠い異国の話をしましょう。遠い過去の話をしましょう。そこでは、我々とは全く違った文化を持った人々が、我々とは全く違った常識に従って、我々とは全く違ったことを考えながら生きています。我々の「当たり前」は彼らの「当たり前」ではなく、彼らの「当たり前」は我々の「当たり前」ではありません。自分たちとは異なる「当たり前」に触れることで、自身の「当たり前」を疑うことが可能となる――これこそが、歴史学の醍醐味の1つです。
この講義では、「民族」と「帝国」の2つのキーワードを軸にしながら、19世紀のアゼルバイジャンに関する諸々を紹介していきます。そこでは、どのような制度のもとに、どのような政治が行われていたのでしょうか。人々の生活はどのようなものだったのでしょうか。そして、人々は、どのようなことを考えながら暮らしていたのでしょうか。
アゼルバイジャンの歴史物語には、皆さんにとっても全く馴染みのある人物も多く登場します。本講義には、例えば、『三銃士』の作者アレクサンドル・デュマが顔を出します。ロシアの文豪たち、プーシキン、レールモントフ、トルストイといった面々も見かけられることでしょう。アルフレッド・ノーベルとノーベル賞も、アゼルバイジャンの歴史と深く関わっています。他にも、ロスチャイルド家、レーニン、スターリン、そしてリヒャルト・ゾルゲ・・・・・・。
最終的には、アゼルバイジャンの歴史から得られた知見をもとに、様々な「当たり前」を疑ってみようと思います。例えば、――あなたは、日本人ですか?
1日目(2月1日)
前半:帝国とアゼルバイジャン
アゼルバイジャンは、1813年にガージャール朝イランからロシア帝国に割譲されました。ロシア帝国は、アゼルバイジャンの旧来の権力機構を段階的に解体し、新たな統治組織、新たな制度を導入していきます。ロシア帝国が目指した支配のあり方とは、どういったものだったのでしょうか。それによって、現地住民の生活は、どう変化したのでしょうか。第1回は、以下の4つのトピックを通じて、近代アゼルバイジャン史の概略と、ロシア帝国による統治のあり方の理解を目指します。
・アゼルバイジャンとは、どこなのか?
・3つの帝国の狭間で――イラン、オスマン、ロシア
・「異境」カフカースを統治せよ
・キリスト教化するイスラーム教?
後半:民族とアゼルバイジャン
現在のアゼルバイジャン共和国の人口は、約1000万人です。しかし、イラン・イスラム共和にも多くのアゼルバイジャン人が居住しており、その数は約2000万人と言われています。なぜ、「国外」に「国内」より多くのアゼルバイジャン人がいるのでしょうか。この謎を解くために、19世紀におけるアゼルバイジャン人の人口分布を調べてみましょう。そうすることで、この謎は・・・・・・。第2回では、以下のトピックを扱います。
・アゼルバイジャンとは、本当にどこなのか?
・アゼルバイジャン人は、1人もいなかった!?
・ここは、どこ? わたしは、だれ?
・アゼルバイジャン人民共和国、建国直後に崩壊す
2日目(2月2日)
前半:民族と帝国
「京都府は、日本国の一部です」「日本の首相は、日本人以外が務めるべきではありません」「歌舞伎は、日本の文化です」「織田信長は、日本人です」――これらは、我々にとっての常識です。世界の人々の大半も、異論を唱えることはないでしょう。では、過去の人々にとっては? 19世紀のアゼルバイジャンの事例から得られた知見をもとに、「民族」とは何かを考えてみましょう。そして、現在の国家とは全く異なる、「帝国」のあり方について学びましょう。
・民族とは、何か?
・帝国とは、何か?
・「国民国家」なる風変わりなアイディア
・帝国たらんとすることが、帝国を崩壊させる
後半:民族と帝国とアゼルバイジャン
民族と帝国についての一般的な知識を獲得した我々は、再びアゼルバイジャンの事例に立ち返ります。アゼルバイジャンは、なぜアゼルバイジャンなのか。アゼルバイジャン人は、なぜアゼルバイジャン人なのか。それらは決して必然の産物ではなく、偶然の歴史的経緯によって形成されたものに過ぎないことを、4つのトピックを通じて考察していきます。
・アゼルバイジャンとは、本当の本当にどこなのか?
・石油が民族を生み出した
・「帝国」としてのソヴィエト
・「大アゼルバイジャン人」という妄想のかけら
主催:京都大学・人社未来形発信ユニット
広報・運営協力:GACCOH
問い合わせ先:ukihss@bun.kyoto-u.ac.jp
ナビゲーター:
塩野崎信也(しおのざき・しんや)
京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、龍谷大学文学部講師。
専門は、アゼルバイジャン史、ペルシア語文献学、古典アゼルバイジャン語文献学。
主な業績に、『〈アゼルバイジャン人〉の創出―民族意識の形成とその基層―』(京都大学学術出版会,2017年)、「18世紀におけるダルバンドの支配者と住民」(『東洋史研究』68-4,2010年)など。また、濱田正美氏と共同で、Mullā Mīr Mahmūd b. Mīr Rajab Dīvān Begī Namangānī『Chahār Fasl (Bidān) / Muhimmātal-Muslimīn』の校訂(京都大学大学院文学研究科、2010年)を行った。
参考文献:
・塩野崎信也『〈アゼルバイジャン人〉の創出―民族意識の形成とその基層』京都大学学術出版会(2017).
・廣瀬陽子(編著)『アゼルバイジャンを知るための67章』明石書店(2018).
・山本有造(編)『帝国の研究―原理・類型・関係』名古屋大学出版会(2003).
・塩川伸明『民族とネイション―ナショナリズムという難問』岩波書店(岩波新書)(2008).
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1日目チケット(2月1日)
2日目チケット(2月2日)
2日間通しチケット
2日間通しチケット(学割 ※大学院生も可)
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