「やっぱり知りたい!フッサール」第3回 表現の現象学 in京都

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「やっぱり知りたい!フッサール」第3回 表現の現象学

2018/8/5(日) 18:00~2018/8/5(日) 20:00

イベント受付開始時間 2018/8/5(日) 17:30~

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やっぱり知りたい!フッサール

 「ほらね、君が現象学者だったらこのカクテルについて語れるんだよ。そしてそれは哲学なんだ!」——1933年、ドイツ留学を終えてフランスに帰ってきたレーモン・アロンが友人のジャン=ポール・サルトルにそう告げると、サルトルは感動のあまりに青ざめたと伝えられています。哲学は、世界の全体像を捉えようと急ぎすぎるあまりに、私たちが生きている具体的な現実を取りこぼしてしまうことがあります。そのような傾向に抗して「触れるがままの事物について語ること」が同時に「哲学であること」を欲していたサルトルにとって、現象学は、自分がずっと待ち望んでいたものに見えたのかもしれません。そして現代に至るまで、現象学は、サルトルと同じような情熱を抱えた多くの人びとを魅了してきたのでした。
 では、この現象学の創始者であるエトムント・フッサール(1859-1938)の著作には、どんなすばらしいことが書かれているのでしょうか? そんな期待に胸を弾ませて彼の著作を手にする人は、往々にして当惑の念を抱くことになるでしょう。というのも、そこにおいてフッサールは、倦むことなく「還元」という方法について考えつづけ、それによって開かれる「純粋意識」という領野について、微に入り細を穿つような記述を行っているからです。「このカクテル」について語るために、どうしてそんな大がかりな道具立てが必要なのでしょうか——その理由は、フッサールの現象学の目的が、特定のものごとを記述するだけにとどまらないという点にあります。たしかに現象学は、「事象そのものへ!」というスローガンを掲げ、個別的な対象についての経験から出発します。しかし現象学は、そこで経験されている対象のあり方や、その対象を経験している意識のあり方を一般化することによって、経験の類型を明らかにすることを目ざしてもいます。触れるがままの事物について語ることが、ただちに哲学であるわけではありません。それを哲学にするためには入念な方法が必要であり、フッサールが書き残した膨大なテクストは、この方法をひたすら研ぎ澄ますことに捧げられているのです。
 この講座では、フッサールの著作や草稿を読み解きながら、意識と世界について現象学的に語るとはどういうことかを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。そして最終的には、皆さん自身が、自分の語りたいものについての「現象学」を作れるようになってほしいと思います。そんなふうに私たちが「自分で考える(selbstdenken)」という態度を身につけたとき、一見すると地味なフッサールの文章は、はじめてその真価をあらわすことになるでしょう。
 
 

第1回 現象学とは何か

 初回の講座では、そもそもフッサールの現象学とは何であるかということを明らかにするために、『イデーンI』(1913年)という著作を読み解いていきます。そこにおいてフッサールは、「超越論的現象学」という構想を提示し、その全体像を予描しています。そこで今回の講座では、なぜ彼が自らの現象学を「超越論的」と形容せねばならなかったのかという問いを手引きとしつつ、そのような現象学を確立するために用いられた「志向性」「還元」「ノエシス」「ノエマ」等の術語の意味を説明していきたいと思います。それらの言葉を駆使してフッサールが記述しようとしていたことは、ものごとが主観(私)に対して現れるという月並みな出来事でした。それゆえ、一見すると難解な彼の論述は、テーブルの上にあるカクテルや窓の向こうの木が経験されるという具体的な状況に立ち返ることによって、きっと理解できるものになるはずです。
 このとき主題となるのは、世界の中の事物についての経験、すなわち「知覚」です。

第2回 人形と身体の現象学

 第2回の講座では、身体についての経験を、身体とよく似た人形についての経験との比較を通じて説明していきたいと思います。
 若かりし頃にベルリンの蝋人形館を訪れたフッサールは、そこで人形を人間と見間違えるという経験をしています。後年になって彼は、そのときの錯覚についての興味深い考察を行っており、それとの対比によって、他人の身体についての経験がどのように成立するかを明らかにしています。なぜ私たちは人形を人間と見間違うという錯覚を訂正できるのでしょうか。さらにいえば、自分の身体についての経験と他人の身体についての経験はどのように関わっているのでしょうか。自分の手に触れることと他人の手に触れることはどのように違っているのでしょうか。気づかれずに他人の目を見ることと、他人と目があうことはどうして区別されるのでしょうか——私たちが日常生活において当たり前のように行っている身体経験は、よくよく考えてみると不思議に満ちています。
 このとき特に問題となるのは、世界の中の他人の身体についての経験です。フッサールはそれを「感情移入」と呼び、特に『デカルト的省察』(1931年)の中で詳しく論じています。

第3回 表現の現象学

 第3回の講座では、相手に何かを伝えるために発せられた表現(身振りや言葉など)に着目したいと思います。表現に関するフッサールの考察は、初期の著作である『論理学研究』(1900/01年)から始まり、晩年に至るまで多くの著作や草稿の中で行われています。
 他人の心の中の出来事は、私に直接的に現れることはありません。しかし、身振りや言葉を介して、それを間接的に表すことは可能です。そのようにして私たちはコミュニケーションを行っているのですが、そこで用いられている身振りや言葉はどのように現れているのでしょうか。もし私たちが非意図的な身体運動と意図的な身振り(例:咳き込みと咳払い、まばたきと目配せ)を区別しているのだとすれば、意図的な身振りにおいて、私たちは何を受けとっているのでしょうか。知らない外国語を聞くときに、意味が分からなくてもそれを言葉として聞くことができるのはなぜでしょうか。他人の言葉を聞くことは、ロボットの音声を聞くことから区別されうるのでしょうか——こうした問いを手引きとしつつ、今回の講座では、「現れること」と「表すこと」の複雑な関係を、現象学の立場から解き明かしてみたいと思います。
 というわけで、一連の講座の最後のテーマとなるのは、世界の中の他人の表現についての経験ですが……さて、この経験は何と名づければよいのでしょうか。あるいは、そこで何かを経験したということは、ただの気のせいなのでしょうか。
 
 
日程:
第1回 現象学とは何か・・・・2018年6月10日(日) 18:00-20:00  終了いたしました。
第2回 人形と身体の現象学・・・・2018年7月8日(日) 18:00-20:00  終了いたしました。
第3回 表現の現象学・・・・2018年8月5日(日) 18:00-20:00


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鈴木崇志(すずき・たかし)

立命館大学衣笠総合研究機構・日本学術振興会特別研究員PD
専門はフッサールの現象学、特にその他者論。
研究業績はこちらをご覧ください。
 
参考文献:
<入門>
谷徹『これが現象学だ』(講談社現代新書)
 フッサールを中心にして、現象学の成立から個々の論点の展開までを紹介している解説書です。具体的な経験に即した説明になっているので、フッサールの思想に馴染みがない人にも分かりやすいと思います。「コーヒーブレイク」と題して随所に挿入されたコラムの内容も興味深いです。
 そして本書を最後まで読み進めた人は、著者が序章で述べている「経験は奇蹟である」という言葉の含意について、ぜひ思いを巡らせてみてください。

<中級>
植村玄輝・八重樫徹・吉川孝編著、富山豊・森功次著『ワードマップ 現代現象学』(新曜社)
 2017年に出版されたばかりの本書の目的は、特定の現象学者の思想を解説することではなく、現代哲学における一つの立場としての「現代現象学」を描き出すことにあります。平易な言葉で書かれてはいますが、そこで展開されている議論は周到であり、哲学的な思考法を学ぶための格好の手引きにもなるでしょう。
 なお、本書の刊行に伴って行われたブックフェア「いまこそ事象そのものへ」は、現象学をさらに学びたい人にとって非常に参考になります。

<上級>
エトムント・フッサール『デカルト的省察』(岩波文庫)
 「現象学入門」という副題が付せられた本書は、1929年にフッサールがフランスで行った講演をもとにしつつ、1931年に出版されました。なお、本書の随所には、フランスの哲学者ルネ・デカルトの『省察』への敬意が表されています。デカルトと同じようにフッサールも、「一生に一度は」自分と世界の関係についての省察を行うことを私たちに求めており、そのための手本を見せようとしているのです。
 本書は現象学への入門となるように配慮して書かれてはいますが、それでもやはり難解な部分を含んでいます。特に第五省察の「間主観性」や「他者経験」についての論述をめぐっては、後の研究者によって多くの解釈や批判がなされてきました。本書に挑戦する人は、フッサールの行った「省察」が正しかったのかどうか、ぜひ自分なりに考えてみてほしいと思います。

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2018/7/8(日) 21:00~

2018/8/5(日) 18:00

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