第142回 詩の読書会「ポエトリーカフェ〈パステルナーク〉篇」(定員17名)
イベントは終了しました
ZOOM を使った、気さくな詩の学び場です。
今回は、ロシアの詩人・作家、パステルナーク(1890-1960)をとりあげます。
この会では、Pippoが詩人の生涯を紹介しつつ、みなさまとともに詩をよみ(お一人ずつ朗読、感想など)自由に語らってゆきます。パステルナークを好きなかたも、気になるけどあまりよく知らない、というかたも大歓迎!(知識・予習なしでもOK)
どうぞ、どなたでもお気がるにご参加くださいね。
ウクライナへのロシアの軍事侵攻によって、心の痛む情勢がつづくなか、一部にロシアのかたや ロシア文化・文学への攻撃、キャンセルの動きがみられるようなことがありました。非人道的なプーチンへの糾弾が高じ、それがロシア全体へのキャンセルとなってゆくようなことを自分は望みません。むしろ、知らないことをもっと知ってゆきたいと思いました。
そこで、前回 マヤコフスキーを取りあげたのですが。この回で、ロシアの歴史を仔細にみつめなおし、皆さんとその詩を読んでゆけたことは、自分自身にほんとうに大きな学びと思考をもたらしました。さらに掘りさげてゆきたく・・・引き続き、ロシアの詩人でゆきます。
【パステルナーク :略歴】
1890年 1月 、 ロシア・モスクワ市の芸術的素養の深い富裕なユダヤ人の家庭(父は著名な画家、母はピアニスト)に長男として生まれる。幼少期からトルストイ、リルケなどの文学者・詩人達と交流のある環境で育つ。音楽家をめざすも挫折、音楽の韻律(ロシア語、ロシア人の心の響きに通底)をもつ詩を書きつづけ、研鑽をつむ。1917年の十月のロシア革命は肯定的に受け容れる。この頃は積極的に革命の戦士としての詩活動はせず、内に秘めた熱情で創作をつづけた。1922年刊の詩集にて、詩人として著名になる(のち大胆に詩表現を変遷・更新してゆく)。1924年頃より目的達成のための革命的暴力への政治批判態度に政府に目をつけられ始める。詩人・翻訳家として有名であったが、1958年、最後の長編小説『ドクトル・ジバゴ』(国からは社会主義/革命批判として出版が許されず、イタリアで翻訳刊行される)がノーベル文学賞に決定した。しかし、国内の言論界の「小説の政治利用だ、売国奴!」等の激しい批判、「侮辱的で許しがたい」というソ連当局からの強い圧力を受け、この受賞を辞退。市民権剥奪は免れるも、晩年は失意の内に戯曲創作をつづけ、70歳、肺がんにて永眠。
==〈詩をチョコっとご紹介〉======
(名声を得ることは・・・・・・)より
名声を得ることは――醜い
高みへ上げるのはそんなものじゃない
文書館をもうけて
原稿管理に心をくだくなど以てのほか
創造の目的は――自己を捧げること
大評判でも成功でもない
何の意味も価値もないのに
多数の口の端にのぼるなど恥ずべきこと
密かにわれこそはと驕りたかぶらず
ついにはわが身に
宇宙の愛を引き寄せ
未来の呼び声を聴くようにして生きること
そしてページの余白に
まるごとの人生の余白や章を
欄外に線で仕切り
紙にではなく 運命そのもののなかに残すこと
*
ただの一分たりとも
自己をすてず
しかし 生きて生きて最後の最後まで
生きていなくてはならない
「変転」より
かつてわたしは貧しい人々に思いを寄せた――
高尚な考えからではなく
ただそこにのみ
豪奢や虚飾のない生活が営まれていたということで
貴族ぶりや洗練された社交界を
知りぬいているわたしだけれど
もとよりわたしは無為徒食の敵で
赤貧浮浪の人々の友であった
わたしは労働者出の人々と
友情を結ぶ努力をし
そのことで敬われもした
同じく貧民とみなされつつ
飾り一つない半地下室や
カーテンもない屋根裏部屋の生活ぶりは
じかに手で触れられ
質感と肉体があり 重みがあった
わたしが腐ったのは
腐敗が時代を侵し
上げ底の小市民や実際家ぶりがへたに真似られ
不幸が恥ずべきものにされたその時以来
信頼していた人たちを
わたしはすでに信じなくなって久しい
わたしは人間を失ったのだ
みんなによって人間が失われたその時以来
「音楽」より
中に戻るや彼はピアノを弾きはじめた
他人の曲ではなく
ただ自分の思念 聖歌を
ミサの鈍いひびき 森のさやぎを
即興曲のとどろきは運んだ
夜を 炎を 燃える円屋根の雷鳴
驟雨の並木路 車輪の音
街の生活 一人暮らしの人々の運命を
そのように在りし日のショパンは
夜のろうそくの炎に照らされ
くりぬき模様のある黒い斜面机の上で
自分の夢を書きとめた たくまざる純粋の見返りに
==【参考文献】======
〈詩〉
工藤正広 編訳『パステルナーク詩集』(小沢書店)
工藤正広訳『初期1912-1914 あるいは処女詩集から』
工藤正広訳『バリエール越え1914-1916』
工藤正広訳『わが妹人生 1917年夏』
工藤正広訳『晴れよう時 1956―1959』(すべて未知谷)
工藤正広 編訳『パステルナーク全抒情詩集』(未知谷) ほか
〈小説〉
ラーラ・プレスコット/吉澤康子訳『あの本は読まれているか』(東京創元社)
★3:Zoomのミーティングルームは開催の30分前(14:30)に開場します。音声・カメラなど不安なかたはテストできますので、お早めにお入りください。
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【初参加枠】第142回 詩の読書会「ポエトリーカフェ〈パステルナーク〉篇」(ZOOM)
予定枚数終了
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