シリーズ Philosopher's philosopher vol.1 バーナード・ウィリアムズ in京都
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「Musician's musician」と呼ばれる人がいる。一般的な知名度や人気より、同業者からの評価がずばぬけて高いミュージシャンのことだ。それと同様に、著作や論文の学界へのインパクトだけでなく、後進に対して「気になる人物」でありつづける哲学者がいる。
たとえばバーナード・ウィリアムズ(1929-2003)はどうだろうか? 日本でこの哲学者の名前を知ってる人は、かつて(10年位前まで?)は哲学のちょっとした「ツウ」であった。ウィリアムズは戦後のオックスフォード大学を代表する哲学者のひとりであり、少なくとは言えない数の著作を残してはいるけども。普通の意味での哲学の入門書には載せにくい哲学者だ。彼の業績のなかで比較的よく知られたものは功利主義への批判だが、その内容がとりわけウィリアムズの独創であると紹介されることはさほど多くはなかっただろう。重要そうな話をしていることは確かだが、中心的な思想の核(コア)をとらえることは難しい思想家、というのが彼に対する大勢の見方であった(はずだ)。
しかし、ウィリアムズの影響力は小さいものではない。マーサ・ヌスバウム、デレク・パーフィット、スーザン・ウルフといった重要な哲学者たちは彼の論文を頻繁に参照している。さいきん注目されているのは、単に功利主義への批判者というだけでなく、道徳理論一般が私たちの個人的生活、人間的領域を単純化して捉え、場合によってはその切り詰めに加担している可能性へのウィリアムズなりの問題提起である。
ウィリアムズの知名度は論文集の翻訳(『道徳的な運』伊勢田哲治監訳、勁草書房、2019)の刊行や主著の文庫化(『生き方について哲学は何が言えるか』森際康友・下川潔訳、ちくま文庫、2020)、そして古田徹也による積極的な紹介(『それは私がしたことなのか―行為の哲学入門』新曜社、2013年)などによって知られるようになってきた。そして、日本語による(おそらく初の)ウィリアムズに焦点を合わせた入門書である渡辺一樹『バーナード・ウィリアムズの哲学――反道徳の倫理学』青土社が今年刊行された。
今回のイベントでは渡辺一樹さんをお呼びして二日間にわたってバーナード・ウィリアムズというPhilosopher's philosopherの魅力と現代的意義を存分に語っていただく。(長門裕介)
Day1
「バーナード・ウィリアムズの哲学――反道徳の倫理学」
2024年8月10日(土)14:00〜16:30
渡辺一樹『バーナード・ウィリアムズの哲学』には「反道徳の倫理学」というサブタイトルがついている。これは気になる表現だ。普通に考えたら道徳と倫理は入れ替え可能な言葉に思える。しかしウィリアムズは道徳と倫理を区別する。そして、渡辺の見解によれば、それは単に言葉上の住み分けというだけでなく、道徳が倫理を抑圧する場合もあるという。Day1では、道徳が私たちの「ほんとうの」生活や決断、自己認識を歪めてしまうというウィリアムズの危惧について、現代社会の問題と関係づけながらその理論的可能性についてお話しいただく。
ナビゲーター:渡辺一樹(聴き手:長門裕介)
会場:京都出町柳 GACCOH(京阪電車「出町柳駅」2番出口より徒歩5分)
Day2
「必然性・インテグリティ・真理――ウィリアムズvsローティ」
2024年8月11(日)14:00〜16:30
待望されていたウィリアムズについての本邦初の入門書である渡辺『バーナード・ウィリアムズの哲学』の各章は、具体的なエピソードからはじまる。この印象的なスタイルが物語るように、ウィリアムズの哲学・倫理学は、個々人のじっさいの生と実践に目を向けるところから立ち現れてくる。この生活への真摯な着目は、本書が指摘する「ウィトゲンシュタイン左派」の体現でもあるだろう。Day2では、本書でも数回「ウィリアムズが批判する立場の典型」として紹介されつつ、彼と同じく後期ウィトゲンシュタインから影響された哲学者であるローティの立場を念頭に、ちょうどその対をなすような存在としてのウィリアムズと本書の魅力を明らかにしたい。
ナビゲーター:渡辺一樹(聴き手:朱喜哲)
会場:オンガージュ・サロン(〒543-0043 大阪市天王寺区勝山3-9-5)
【オンライン視聴について】
・お申し込みは当日の3時間前で締め切りとさせていだきます。
・配信はvimeoの限定公開機能を使用いたします。
・オンライン視聴チケットをご購入いただいた方には、イベント開始の2時間前にメールにてオンライン会場となるvimeoページのURLを送信させていただきます。
・イベント終了から1ヶ月間のアーカイブ視聴が可能です。
お問合せ:gaccoh009@gmail.com
【ブックフェア】
・京都 大垣書店 高野店(開催期間:7月下旬から予定)
出演:
渡辺 一樹
わたなべ・かずき
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程。日本学術振興会特別研究員(DC1)。 専門は、道徳哲学、政治哲学。主な著書に『バーナード・ウィリアムズの哲学──反道徳の倫理学』(青土社、2024年)、『思想としてのアナキズム』(共著、以文社、2024年)。主な論文に“Morality as Misconception of Life: A Defense of Bernard Williams’ Critique of the Morality System”(Tetsugaku: International Journal of the Philosophical Association of Japan Vol.8、近刊)などがある。
長門 裕介
ながと・ゆうすけ
大阪大学社会技術共創研究センター特任助教。慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。専門は倫理学、特に幸福論や人生の意味、情報倫理学。現在、大阪大学社会技術共創研究センター特任助教。最近の業績に ”Addressing trade-offs in co-designing principles for ethical AI: perspectives from an industry-academia collaboration”, AI and Ethics, vol.4-2, (A. Katiraiとの共著、2024)、『人生の意味の哲学入門』(共著、 春秋社、 2023)、R.ハルワニ『愛・セックス・結婚の哲学』(共訳、名古屋大学出版会, 2024)など。
朱 喜哲
ちゅ・ひちょる
1985年大阪生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。大阪大学社会技術共創研究センター招へい准教授ほか。専門はプラグマティズム言語哲学とその思想史。著書に『人類の会話のための哲学』(よはく舎 )、『〈公正〉を乗りこなす』(太郎二郎社エディタス)、『バザールとクラブ』(よはく舎)、共著に『ネガティヴ・ケイパビリティで生きる』(さくら舎)、共編著に『すごい哲学』(総合法令出版)、共訳にロバート・ブランダム『プラグマティズムはどこから来て、どこへ行くのか』(勁草書房)などがある。
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チケット情報
このチケットは主催者が発行・販売します
オンライン視聴チケット(Day1)
1,200円
オンライン視聴チケット(Day2)
1,200円
オンライン視聴チケット(二日間通し)
2,000円
会場参加チケット(Day1)
1,500円
会場参加チケット(Day2)
1,500円
会場参加チケット(二日間通し)
2,500円
販売条件
・チケットは税込価格になります ・イベント予約完了後のチケット代はご返金いたしかねますので、あらかじめご了承ください。
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